万年筆に関心があり、試しに使ってみようかといざ購入を検討した時、どんな風に選んだらいいか分からないし、そもそも商品説明の用語が良く分からないなんてことがあると思います。
本記事では、万年筆を選び時のポイントと万年筆の商品説明でよく出てくる言葉を解説してたモノです。
この記事は、参考資料と私の経験を基に初心者の方が万年筆を購入する際にカタログや通販で迷わないように万年筆の選び方をまとめたものです。
これから万年筆を始める方、特に左利きの方の万年筆選びの参考になれば嬉しいです。
この記事を読んだら、万年筆の選び方が分かるようになります。
参考資料は枻出版社 「万年筆とインク入門」¥1600+税です
万年筆を選ぶ前におおよその使い道と予算を決める。
万年筆を選ぶ時に考えておくことは2つです。
- 何に使うか。
- 予算。
万年筆は使用する場面によって、「字幅」が異なります。
自分の考えていた使用目的に合わない字幅を選んでしまうと非常に使いにくくなります。
なので、まずは万年筆の使い道をある程度決めておくことをオススメします。
例えば
- 手帳
- 授業や講義の板書
- 日記
- 多目的の自由帳
- 手紙
次に予算です。予算の範囲を決めておくと無駄に悩まなくて済みます。
万年筆は安いものだと数百円、高いモノだと数百万円します。とても価格の幅が広い商品です。
予算を決めて、その範囲内で探すと選択肢が事前に絞れるので選ぶのが楽になります。
※万年筆選びは予算が高くなればなるほど、悩む時間が増えます。「あれもいい、これもいい、これも試したいし、あれも試したい」とどんどん沼にハマっていきます。
万年筆を選ぶ5つのポイント。
万年筆を買う予算と使い道が決まったら、万年筆を選んでいきます。ポイントは5つです。
- デザイン
- 字幅
- インク充填方法
- ボディサイズ
- ペン先
5つのポイントを頭に入れつつ、予算の範囲内で万年筆を選ぶと自分に合った万年筆を選べます。
デザインは自分の好みです。どんなデザインの万年筆が良いか色々デザインをみて、イメージを膨らませる時が万年筆を選ぶ時に一番楽しいかもしれません。
字幅は自分の万年筆の使い道に合わせて選んでもらえればOKです。ただ、万年筆によって希望する字幅がないこともあるので注意しましょう。
インク充填方法はカートリッジ式、両用式、吸入式の3種類のどれかになります。万年筆によって決まっているので、選ぶ際に注意してください。
選ぶ時に大きなポイントにはなりませんが、「手帳に使う」に限るとボディサイズも注意してみないといけません。
ペン先も選ぶポイントとしては大きくありません。ただ、金ペンと鉄ペンどちらもある万年筆に遭遇した時に迷わなくて済みます。
デザインは好み。
万年筆のデザインを選ぶのは完全に個人の好みなので、ここではどんな万年筆があるかご紹介します。
通販サイトやカタログ、実店舗で万年筆を眺めて好みのデザインを探してみて下さい。
基本的な万年筆の形はバランス型とベスト型に分かれます。
バランス型は全体的な丸みが特徴的です。
ベスト型は軸がまっすぐで頭とお尻に角があります。
万年筆の形の他に、万年筆の素材も好みが分かれるとろこです。
左からアルミニウム、樹脂、レジン、スケルトンです。見た目が全然違うのが分かるかと思います。
参考までに万年筆の素材でよく目にするものをまとめました。
レジン | 合成樹脂で出来ていて、不規則でキレイな模様や柄が楽しめる。 |
セルロイド | ニトロセルロースと樟脳を加えて作るプラスチック。独特の透明感のある色と光沢をもつ。90℃以上で軟らかくなり、170℃を超えると発火する性質がある。 |
エボナイト | 天然ゴムを主原料とした合成樹脂。レジンが普及するまでは万年筆の軸やペン芯に用いられていた。 |
スケルトン | インクが透けてみるので、インクの色を含めて楽しめる。 |
木軸 | 使い込んでいくうちに艶が出てくる。 |
ステンレス | 強度があり、錆にくい。 |
真鍮 | 銅と亜鉛を混ぜた合金。適度な強度があり加工もしやすい。コーティングがないものだと、経年変化が楽しめる。 |
ロジウム | 金属軸のコーティングによく使われる。変色しづらい。 |
パラジウム | パラジウム 光沢のある白色が特徴 |
シルバー | 銀92.5%銅7.5%のものをスターリングシルバーという。 |
私が持っている万年筆をまとめた記事です。デザインの参考に見てみて下さい。↓
左利きの万年筆レビュー まとめ図鑑 | みつけのしろうさぎ (mitukenosirousagi.com)
字幅は使い道で選ぶ。F(細字)M(中字)B(太字)
初めて万年筆を買う場合、試し書きできるお店で買うことをおすすめします。
なぜなら、試筆をすれば具体的な字幅が把握できて字幅選びしやすくなるからです。
左利きの方の場合、どうしても書いているうちに自分の手で字を擦ってしまうので、全般的に細い字幅の方が手や文字が汚れずに済みます。
字幅はおおまかに分けて3種類です。F(細字)M(中字)B(太字)
F (細字) | 手帳や授業用ノートで用いる |
M(中字) | 原稿用紙や便せんなどの手紙 |
B(太字) | 年賀状や郵便の宛名書き |
他にも(EF)極細(MF)中細(BB)極太など、それぞれの間ぐらいの字幅もあります。
ただ、これらは万年筆によって用意があったりなかったりするので、まずは3種類で考えると良いでしょう。
※国産万年筆と外国産万年筆とでは同じ字幅でも線の幅が違います。(靴などで同じサイズでも若干のズレあるのと同じ感じです)
F(細字)は手帳で大活躍。サササっと書くのに向いてます。
手帳や授業や講義の板書で使用するならF(細字)がおすすめです。
理由はF(細字)は小さい字が書きやすく、手帳やノートで書く文字の大きさに一通り対応できるからです。
私は手帳や日記、アイディア帳や原稿の下書き等をほとんどF(細字)を使っています。
ただ、F(細字)だと筆記時に筆圧が強いと引っ掛かりを感じやすくなります。万年筆に慣れないうちは引っ掛かりがあるかもしれません。
なるべく引っ掛かりを減らしたい方は最初はM(中字)をオススメします。
筆圧は練習や慣れで段々とコントロールできるようになってきます。
10年以上万年筆を使っている私はほとんどの万年筆でF(細字)でも引っ掛かりを感じることはありません。
気持ち良い書き心地で万年筆を使う事が出来ています。
↑手帳での字幅の比較になります。上から国産(F)外国産(F)国産(M)外国産(M)で字幅を比較しています。
一般的には国産の方が細いです。
↑は大学ノートでの字幅の比較です。上から国産(F)外国産(F)国産(M)外国産(M)で字幅を比較しています。ノートはコクヨのキャンパスノートB5サイズです。
大学ノートで使う時は国産万年筆のF(細字)M(中字)外国産万年筆のF(細字)が無難とか思います。
左利きの場合、文章書いていると手や文字が汚れます。それを防ぐため、必要以上に字幅を太くすることは避けた方がいいでしょう。
M(中字)手紙で力を発揮する字幅。
ノートや手紙などで使用するならM(中字)におすすめします。
特に少し大きめの手紙を使用する時、F(細字)よりM(中字)の方が見栄えが良いです。
手帳などで小さい字を書くには向きません。あと、F(細字)より手を汚す可能性があるので、書いた字を手で擦らないように注意が必要です。
↑手紙での国産(F)外国産(F)国産(M)外国産(M)で字幅を比較しています。
手紙のサイズはB5サイズ(縦257㎜×横182㎜)です。
B(太字)実用よりも趣味で使う。
私はB(太字)を使ったことがないので大したことは言えませんが、日常使いでB(太字)を使う事はないと思います。
B(太字)は万年筆の書き心地を最大限楽しむために使う字幅だと思っています。
本の中では年賀状や郵便の宛名書き、アイディア帳、便せんなど使用用途が書いてあります。
しかし、B(太字)だとF(細字)M(中字)より書いた文字のインクの乾きが遅く手を汚したり、文字を潰してしまう可能性がさらに大きくなるのであまりオススメ出来ません。
インク充填方法(手軽な両用式、本格的な吸引式)
インク充填方法はカートリッジ式、両用式、吸引式の3種類があります。カートリッジのみに対応した万年筆は少なく、ほとんどの万年筆は両用式です。
吸引式の万年筆は値段も比較的高いですし、カートリッジインクに対応していないので最初はカートリッジ式か両用式をオススメします。
両用式
カートリッジインクとコンバーター(インク吸入器)どっちも使えるタイプ。
インク充填方法として多いのは両用式になります。安価なものから高価なものまで幅広く使われています。
カートリッジの場合、カートリッジインクを万年筆に差し込むだけでインク充填が出来ます。
カートリッジインクを使う時、その万年筆に使えるカートリッジインクを使わないといけません。
カートリッジインクなら、どれでもOKではないので気を付けましょう。
コンバーターの場合、カートリッジに比べて手間が多いです
- その万年筆に適合しているコンバーターを買い、インクボトルを買ってきてくる。
- 自分でインクボトルからインクを吸引して充填する。
- 余計なインクをふき取り、万年筆の軸についたインクをふき取る
- そして手にはインクがついている※丁寧な人はつきません。
「この手間が万年筆の味わいの1つ。この手間をかけてる時間でインクの色の鮮やかさを堪能することができる。」とむしろ手間を喜ぶ方も結構いらっしゃいます。
ここにハマると吸入式にレベルアップしていきます。
吸引式
インクボトルにペン先を入れて、尻軸を回して軸内に直接インクを吸入する。首軸と胴軸は分けられず、尻軸が回わるようになってます。
書いている時間も楽しいですが、インクを充填している時もこの上なく楽しい。
ここまでくると手に付いたインクでさえその色鮮やかさを見ていると楽しくなります。
インクのタイプ
左からカートリッジ、インクボトル(小)、インクボトル(大)
左から順番にセーラー、パイロット、プラチナ、カヴェコ(ヨーロッパ共通規格)のカートリッジ。
カートリッジインク:小さい筒状のカートリッジにインクを入れた交換が簡単な小型インク。ボトルインクに比べると色の種類が少ないです。
※万年筆によって適合するカートリッジが違うので、よく確認してからカートリッジを買うようにしましょう。
ボトルインク:ガラスやプラスチックなどのボトルに入ったインク。
コスパはボトルインクの方がいいですが、コンバーターなどでインクを万年筆に吸入する手間があります。
インクの色の種類はボトルインクの方が種類が多いです。
ボディサイズ 最初はあまり気にしなくていい。
万年筆の長さ、太さ、重さに好みやこだわりがなければ気にしなくて大丈夫です。
万年筆をよく使っていると「もうちょっと太い方が書きやすいな」とか、「もうちょっと重い方が持った時のバランスがいいな」とか段々と自分の好みやこだわりが出てきます。
まずは店頭で実際にみて、手に取って具体的なイメージをつけることをおすすめします。
お店で手に取った万年筆が基準になり、ボディサイズや重さ、軸の太さを具体的にイメージすることができます。
ボディサイズの基本項目
「長さ:収納時」「長さ:筆記時」「軸径」「重さ」について解説します。
※長さの表記は㎜にしてます。理由は㎜で表示しているところが多いからです。
収納時:キャップを閉めた状態の長さ
収納時の長さはサインペンと同じぐらいの万年筆が多いです。
だいたい130㎜~140㎜ぐらいです。サインペンは長さ137㎜です。
左側は長さ125㎜で比較的小さい万年筆です。※左利きだと長さ125㎜の万年筆の方がキャップポストした時にバランスが良いです。
筆記時:尻軸にキャップをハメた状態の長さ(キャップポスト有)
筆記時(長さ)はキャップポストした状態の長さを指します。キャップポストとは尻軸にキャップをハメた状態をいいます。(上の画像)
左から146㎜、153㎜です。だいたい150㎜前後の万年筆が多いですが、170㎜とか160㎜の万年筆もあります。
キャップポストはしてもしなくても万年筆は使えます。ただ、キャップポストするかしないかで持った時のバランスが変わります。
試筆する時にキャップポストする状態、していない状態で書いてみると違いがよく分かります。
私の場合、日記や手紙などゆったり書ける時はキャップポストして使っています。
アイディア帳や勉強などで字を少し小さくある程度テンポよく書きたい時はキャップポストしないで使っています。
胴軸径:胴軸の太さペンの握りやすさに関係します。
「胴軸径」「最大軸径」など色んな表記がされますが、ペンの太さの目安です。
左から11.5㎜、13㎜。ちなみに我が家のサインペンは軸の太さは11.5㎜です。細い万年筆だと10mm以下、太い万年筆だと15㎜以上あります。
※最大径(φ)という記号が出てくる時があります。これは万年筆の軸の一番太いところの直径です。φは(ファイ)と読みます。
手帳用に万年筆を使う時は「万年筆の軸の太さ」は気を付けないといけません。手帳に挟むなら、軸の細い万年筆を選ぶ必要があるだからです。
↓私が手帳で使っている万年筆(軸の太さは8㎜)
重量:本体とキャップを含めた重さ
重量は万年筆の大きさや素材によっても大きく変わります。
入門万年筆だと15g~20gぐらいです。我が家のサインペンは11.5gでした。
初心者の方はあまり気にしなくてよい項目ですが、重すぎには注意してください。
私が持っている重量級の万年筆は30g~35gぐらいあります。
ペン先(金ペン先・鉄ペン先)
↑パイロットの「カクノ」は特殊合金のペン先(鉄ペン)です。
初心者の方は鉄ペンがおすすめです。なぜなら価格が安いからです。そして、安くても書き心地はとても良いからです。
万年筆にハマったら、金ペンに挑戦してみると良いと思います。
鉄ペンとはステンレススチールのペン先のことです。鉄ペンは「ステンレススチール」「ステンレス」「特殊合金」などの表記が多いです。
金ペンは「21金」「18金」「14金」に分けられます。
金ペンと鉄ペンのメリット・デメリット。
↑セーラーのプロフィット21レフティは21金ペン先(金ペン)です。
一番は「金」を使っているかどうかです。それもステータスとしての「金」
書き心地は好みにもよりますが、「金」だから良い「鉄」だから悪いということはありません。
ペンポイント(ペン先の丸い部分)はイリドスミンという硬い合金で作られています。これは金ペンも鉄ペンも同じです。
紙に当たる部分は金ペンも鉄ペンも同じ素材です。
金ペンのメリット・デメリット
メリット
- 修理や調整がしやすい(金が比較的軟らかいため)
- 「金」というステータス性
デメリット
万年筆の値段が高価になる傾向がある。
鉄ペンのメリット・デメリット
メリット
- 値段が安価
デメリット
- 金ペンより修理や調整がしづらい(素材が金より硬いため)
- 錆びにくいが、長く使えば錆びる。
金ペンの種類
金ペンの種類 | (金100%を24金として) |
14金 | ペン先に58.5%金が含まれている。 |
18金 | ペン先に75.0%金が含まれている。 |
21金 | ペン先に87.5%金が含まれている。 |
私の思う金ペン(自己満足)
見た目だけなら金メッキで済みます。しかし、「21金」「18金」「14金」と呼べるのは、基準の金が入っているペン先だけです。
「21金の万年筆を持っている」「14金の万年筆で文字を書いている」自分の「書く」を少し特別な気分にしてくれます。それが金ペンの良いところだと思います。
心惹かれる万年筆に出会って、使って欲しい。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。おそらく他の方の万年筆の選び方とあまり変わらなかったのではないでしょうか?
左利きでも万年筆の選び方はあまり変わりません。ただ、それを左利きが発信することが大切だと思い本記事を作りました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。参考文献と私の経験から長々語らせていただきました。万年筆を始める方、左利きの方の役に立てば幸いです。
みつけのしろうさぎ
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